きみが春なら

ハルが体調を崩したのは
更に数日後の事だった。

「ねえ。これは?」
ベッドの上で半身起こした君が、楽しげに俺に聞く。開かれた例の本を横から覗き込む。

「『近頃』」
「ちかごろ」
「最近、とか。そういう意味」
「へぇ」

ハルはまたぺら、とページを捲り
「すごい。もうすぐ一冊読み終わる」
嬉しそうにそう言った。

「でも。今日はここまでだ」
本を受け取りぱたんと閉じる。瓶に入った水と一緒に、サイドテーブルに置いた。

「熱があるんだろ」
「少ししかないのに。何だか皆大げさに心配してくれるの」
「だったら尚更早く寝て、軽いうちに治せ」
ハルは素直にベッドに横になる。

「また明日の朝、様子を見に来るよ」
「ありがとう。朝にはすっかり元気だと思う」
もう既に眠たげな口調だった。

「気をつけて帰ってね?」
「ん。おやすみ」

頷いて頭を撫でると
君は目を閉じ、微笑んだ。