きみが春なら

どうやって家に戻ってきたのか、よく覚えていなかった。
体を沈めたソファから、このまま起き上がれないような気がした。


── 『ハル様が君の元へ戻ってくる事は、二度とない』。

……わかってる。

『君は君で、これからも生きていかなきゃならない』。

わかってるよ。

仰向けになり、片手で目を覆う。

……ああ。ダメだな。
『疲れてもソファで寝ないで』って。
『温かいベッドで眠って』って。最後に君に言われたのに。


気付けば、まただらしなく涙が流れている。
離れて半年が経っていた。

マナトが届けてくれたアップルパイは、結局一口しか食べられなかった。
懐かしくて。淋しくて。おかしくなりそうで。


……家族になりたかった。
一緒に生きていきたかった。
はにかんだ笑顔で受け入れてくれた日の記憶は今も鮮やかだ。

でもケビーが言うように。俺が留まり続ける事で、余計に君を苦しめるのなら。

「……」

決断の時が迫っているのを肌で感じていた。
自分がどうすべきか。本当は随分前からみえていた。

最後の一押しを手に入れるタイミングを。ずっと探し続けていただけかもしれなかった。