きみが春なら

「なぁ」
君が夜空から俺に視線を移す。

「ハル、って名前。漢字でどう書くか覚えてるか?」
「季節の『春』よ」
「やっぱりな」

予想通りすぎて笑ってしまう。

「そんな気がしてた」
「そう?」
「ああ。ピッタリだ」

ハルは空中に指で線を引き、首を傾げる。
「途中までは、こう……だったような」
「そう。で、続き」
彼女の右手を動かし、『春』と書いた。

「わ。すごい。もう一回書いて?」
「うん」
 
もう一度手を重ねて。
君の人差し指を、ゆっくり夜空に滑らせる。

── 春。

その名の通り柔らかくて優しくて、あったかい君に。
心はとっくに奪われていた。