きみが春なら

「── 籠の中の鳥だ。まさに」
思わずそんな言葉が口から漏れた。
間髪入れずにはっ、と嘲るような笑い声がした。

「そう思うなら。さっさと扉を開けて解放してやったらどうだ」
「本当だよな」
「え?」
イーヴァンがベッドの上で体を起こす。

「そうしてやりたいよ。……出来る事なら」

何でだろうな。
こんなに胸がかき乱されてる。

君の笑顔と
君の涙に。


「王子の側近なんだろ?変な奴だな」
先程とは打って変わり、戸惑った顔つきだ。何も返さずにいると彼はまたベッドへ横になる。

「……そういえば黒髪なんだな。あんたも」

今にも寝入ってしまいそうな声が、ふわっと空中に浮かんだ。
 
「俺も日本人だからな」
「名は?」
「マナト」
「日本人を側へ置くのが好きだな。あの王子」
「ははは。確かに」

思わず吹き出した。

「……諦めないつもりなのか」

問いかけるも返事はない。
寝たか、と思った時。

「── 諦められたら。とっくに国を出てるよ」

夢に片足突っ込んだ状態のイーヴァンは、素直に答えてくれる。

「……そうか」

今度こそ本当に寝息が聞こえてきた。すっきりしない気持ちを抱え目をやった窓の外は、朝靄に包まれている。

── 籠の中の鳥は
ここにももう一羽いるみたいだ。