きみが春なら

それから二日間は闇市に店を出した。
道行く観光客に片っ端から声をかけ、手段を選ばず売りまくる。『別人みたいなやる気だな』と商店仲間からまた野次られたが、気にしない。

アーサーの作戦決行日まで頭を空っぽにしていたかった。金を稼ぐのが一番気が紛れた。

「いくら?」

三日目の昼、アメリカ人の団体旅行客を相手にしていた時の事だ。
冬だというのに大胆にスリットの入った黒のドレスを着た女が、店頭に立ち声をかけてきた。金髪がゴージャスに巻かれている。

「このブレスレット?安いよ。たった500ドルだ」
明らかに金持ちと見えたのでふっかけてみる。彼女は表情一つ変えずに言った。

「1000ドル出すわ」
「、は?」
「だから……」
肩を引き寄せられ、

「あなたごと買わせて?」

吐息のかかる距離で囁き声がした。