きみが春なら

ハルを教会の側まで送り届けた後。家に戻った俺は、紙袋を開けた。

『お店のキッチンの有り物で作っただけだけど』
お腹が空いたら食べて、と別れ際に渡されたものだ。

「おぉ、」

中から出てきたのはプラスチックのパックに詰まったサンドイッチとチキン。そしてボルシチだった。
濡れたナプキンで手を拭いていると
「いやぁ、また新しいカモになりそうな奴が見つかったぞー!」
上機嫌のダニーが帰宅した。

「あとは金持ちだといいんだが。ん?」
家に飛び込んだ勢いのまま俺の側まで来て立ち止まる。

「美味いよな。ここのホットドッグ」
ダニーは紙袋に書かれた店名を指さしている。

「知ってるのか」
「綺麗な女の子が売ってるって評判だったもんでね。一度食べてみた」
「評判?」
「そうだ。黒髪で、目のクリクリーっとした可愛い子じゃなかったか?」
「……ああ」

完全にハルの事だ。

「彼女の時間にはいつも行列だそうだぞ。確かワゴン販売だろ?その日によって場所が変わるのもまた希少性があって良い」

ダニーの話を頬杖をつきながら聞く。何故か面白くない気分だ。

「でも、サンドイッチなんてあったかな?どれ、一つだけ」

手を伸ばしかけたダニーに、パックごと背を向ける。

「やめろ。特別メニューなんだよ!」

齧りついたサンドイッチは、香ばしく炒ったベーコンとレタスの味がした。