きみが春なら

夕方に設けられた休憩時間。部屋の扉をノックすると、ハルはすぐに顔を出した。
「ちょっと付き合わないか」

向かったのは、城の別棟だった。
国王陛下や王子。そして彼女が普段生活している城と廊下一本で繋がってはいるものの、ほとんど物置と化しており誰も足を踏み入れない場所だ。昼間でも薄暗く、ひんやりしている。
ドレスを着ている彼女のペースに合わせてゆっくり歩く。

「何か言われた?女王様に」

赤絨毯が敷かれたスロープ式の通路を上りながら、問いかけた。昨夜、披露宴の途中で離脱した件を女王陛下が責め立てる姿は容易に想像できる。

「……ううん。」

彼女が小さく首を振った。
それきり会話は途切れてしまう。

「……」

口数の多いタイプでない事は、最初から気付いていたが。
── なかなか心を開いてもらえないな、と。
ついそんな風に思った。