きみが春なら

廊下を歩いていると、ハルの部屋の前で立ち尽くすメイドを見つけた。
「どうした」
振り返った彼女は困ったように言う。

「ハル様のご昼食の食器をお下げしたいのですが、何度確認しにきても部屋に戻ってらっしゃらなくて。まだ手付かずなんです」

腕時計を確認すると、もう15時をまわっている。そういえば今日は一度も彼女の姿を見ていない。

「どこにいるんだ?」
「お昼にお食事をお持ちした時に、ちょうどお部屋を出て行かれたんです。女王様に呼ばれているって」
「え」
「まさか、まだご一緒なのかしら。3時間経つのに」
そんな事を話している最中、廊下の端にちょうどハルが現れた。

「……あら?」

部屋の前で立っている俺たち二人に気付いたようだ。

「ご昼食が……お済みでないようでしたので」
「あ、ごめんなさい。今からいただきます。自分で食器を下げますね」

口調は優しかったが、その表情は明らかに疲れている。
思わずメイドと顔を見合わせた。