きみが春なら

瞼をゆっくり持ち上げると、すぐ側に誰かがいた。
二度、三度。瞬きを繰り返す。
静かに眠っているのはどう見てもロレンツォ様だ。

「……」

目の前にはシャツのはだけた彼の胸。
抱きしめられているのだとぼんやり理解する。

── 披露宴は?
ふと自分の体に視線を落とし、驚愕した。

「きゃあぁぁ!!」

王子様が眉をしかめたのを見て、咄嗟に大きな枕で体を隠す。
何故かドレスの下に着ていたペチコートワンピース一枚になっていた。

「目が覚めたか」
「なっ……な!?」
「妙によく眠れた。人肌もたまには悪くない」

パニック状態の私とは対照的に、欠伸なんかしながら彼は体を起こす。
「言っておくが、しがみついて離れなかったのは貴様だぞ」
顔まで隠していた枕を掴んで下げられる。意地悪い笑顔がそこにあった。

「酔うと大胆になるのだな?覚えておこう」

思い出したように頭痛がする。ワインがまだ体に残っているみたいだ。
王子様はベッドから下り服装を正し始める。

「今日は一日中外出の用がある。朝食はあるのか?」
「え……は、はい。すぐご用意します」
「俺の部屋に持ってこい」

さっさと出て行く背中を呆然と見送った。

「みら……見られ……」

何を。どこまで。
昨夜披露宴の後に何があったのか、ひとつも記憶に残っていない。
恥ずかしすぎて涙が出そうだ。枕に埋めた顔が上げられない。

自分がこんな失態を犯すなんて、信じられなかった。