きみが春なら


国内外から来賓を招いての披露宴は、全てが想像を上回っていた。
お城で一番大きいというホールにびっしり集まった人々を目にし、思わず足が竦む。
高い天井に、煌びやかなシャンデリア。部屋中が豪華な装飾で飾り付けられ、振る舞われる料理も一流のものばかりだ。

披露宴が始まっても私はただロレンツォ様の隣で座っているだけだったけれど、多数の視線を感じて一瞬も気が抜けなかった。
席まで来て祝福の言葉をかけてくれるお客様に注がれるまま、ワインをそろそろと喉に流し込む。

「挨拶に行くぞ」

歓談の時間になるとロレンツォ様がそう言った。返事をして立ち上がる。

会場にはジャズの演奏が心地よく流れている。
王子様の腕に掴まり、たくさんの方とお話をした。
皆さん優しく声をかけてくれたけれど、粗相があってはいけないと思うとますます緊張して上手に話せない。

場内ではいつの間にかダンスの余興が始まっていて。踊り子の間を縫うように歩きながら、次第に頭がふわふわしてきた。
きちんとしなくちゃ、と自分に言い聞かせても。
早足の王子様に着いて歩く事ももう難しくて。

「……ロレンツォさま」
「ん」
「なんだか気分が……」

言い終わらないうちにぐらっ、と体が傾いた。

── あ。

たおれる、と思った時。

「大丈夫か」

耳元でマナトの声がする。
返事も出来ないまま、気が遠くなってしまった。