きみが春なら

翌朝。
ロレンツォ様の朝食を作りお持ちしたものの、なかなか扉をノックできずにいた。

朝食は摂る日と摂らない日があると、専属コックの人達に教えてもらった。そんなにお腹が空かないのかもしれない、と思いパンを焼いて簡単な野菜のおかず数種とポタージュという、シンプルな朝食にしたけれど。
王族の方にお出しする食事にしては質素すぎた気もして、不安になってきた。考えを巡らせながら扉の前で固まっていると。

「……何してる。さっさと入ってこい」

いきなり扉が開き、呆れ顔の王子様が顔を出した。
「ど、どうして」
「気配でわかるに決まってる」
彼はそう言って、料理の乗ったトレーに視線を落とす。

「食べられそうでしたら召し上がって下さい。後で食器を下げに」
「待て」
私の言葉を遮った彼は、扉を大きく開く。
「入ってこい。俺が食い終わるまでここにいろ」


王子様が召し上がっている間、大きなソファで待たせてもらった。
どういう評価を下されるかどきどきして、自分の足下ばかり見つめていた。

「── 本当に料理が得意なんだな。」

ふと声をかけられ、顔を上げる。
「うちのコックたちの料理にも飽きがきていたところだ。新鮮だ」
ロレンツォ様はそう言ってポタージュをまた一口啜る。表現できない気持ちで胸がいっぱいになって、彼が完食するまでぼんやり眺めてしまった。

「美味かった。明日からも楽しみだ」

ほっとして、つい頬が緩む。

「……良かった。」

立ち上がった王子様は私の元へ歩いてくる。
「ようやく笑ったな」
そんな呟きが聞こえて。ソファに座ったまま、身を屈めた彼に口付けられた。

「今夜はいよいよ披露宴だからな。支度は早めに済ませろよ」