きみが春なら

「でかしたな。さすが元料理人だ」
その夜、私の部屋を訪れるなりロレンツォ様はお褒めの言葉をくれた。

「り、料理人という程では……お役に立てて良かったです」
「何か褒美をやろう。何が欲しい?ドレスか。宝石か」
「じゃあ。またたまにキッチンを使用する許可を頂きたい、です」
おそるおそる切り出すと、ロレンツォ様は虚をつかれたような表情になる。
「キッチン?」
「空いてる時にお借りするくらいでいいんです。空いてる時なんて無いのかしら」

ただ流されるまま過ぎる毎日の中。昼間、久しぶりに自分の手で料理が出来た事は随分息抜きになっていた。

「容易い事だ。話を通しておいてやろう」
彼はそう言ってくれる。

「そんなに料理が好きなら。明日から俺の朝食はお前が作れ」
「え」

予想外の提案に、今度はこちらが驚く番だった。
「……が。頑張ります」
そう返事すると、王子様は声をあげて笑った。