「……あまりお気になさらない方が」
部屋に到着し、思わずそう声をかけた。
「女王陛下は少々感情的な方です。受け入れるまでに時間が必要なのだと思います。ですが、あの方の意見が城の者や国民の総意ではありません」
彼女は黙って俺を見つめている。
「貴女は、王子に選ばれたのです。堂々と生活なさって下さい」
気休めにもならないとわかっていたが、伝えておきたかった。
今までと丸きり違う王族としての毎日が、彼女にとって過酷なものである事は想像に難くない。それをサポートをするのも俺の仕事だ。
「女王様がああ仰るのは当然だわ。全部本当の事だもの」
ぽつりと言った彼女は、少しだけ表情を緩めた。
「ありがとうございます。優しいのね」
唖然とした。
優しい?って言ったのか?
今、俺に。
「個人的な質問なのですが── お生まれは日本でいらっしゃいますか」
あえて日本語で、問いかけた。
彼女が目を丸くする。が、答えが返ってくる様子は無い。
「あ……失礼しました。ロシア語の方が?」
「七歳までしか日本にいなかったんです。ものすごく久しぶりに日本語を聞いたから驚いてしまって。出身を聞かれたのよね?」
「はい。お名前が日本名ですので」
「そう。ロシア人との混血だけれど、生まれたのは日本よ。父が母の姓に入ったから……それで、この名前なの」
もしかして?と返される。
「はい。自分は純日本人です。十年程前に、この国に」
「そうなのね。アジア圏の方なのかなとは思ってたの。同じ黒髪だし。お名前は?」
「マナトです。アサカ・マナト」
彼女はふんわり微笑んだ。
「じゃあ……あなただけでも普通に話してくれると嬉しいです。歳も同じくらいな気がするし」
「え」
とんでもない提案に当惑してしまう。
「そ、そういう訳には。立場もありますので」
「そうなの?何だか皆に敬語を使われるのが落ち着かなくて。」
急に慣れない環境に身を置かれ、心細い気持ちはよくわかる。伏し目がちに話す彼女と十年前の自分が重なる。
「わかった。じゃあ……二人の時だけ」
躊躇いつつも受け入れた。
うん、と彼女が頷くと首もとでネックレスが揺れた。
部屋に到着し、思わずそう声をかけた。
「女王陛下は少々感情的な方です。受け入れるまでに時間が必要なのだと思います。ですが、あの方の意見が城の者や国民の総意ではありません」
彼女は黙って俺を見つめている。
「貴女は、王子に選ばれたのです。堂々と生活なさって下さい」
気休めにもならないとわかっていたが、伝えておきたかった。
今までと丸きり違う王族としての毎日が、彼女にとって過酷なものである事は想像に難くない。それをサポートをするのも俺の仕事だ。
「女王様がああ仰るのは当然だわ。全部本当の事だもの」
ぽつりと言った彼女は、少しだけ表情を緩めた。
「ありがとうございます。優しいのね」
唖然とした。
優しい?って言ったのか?
今、俺に。
「個人的な質問なのですが── お生まれは日本でいらっしゃいますか」
あえて日本語で、問いかけた。
彼女が目を丸くする。が、答えが返ってくる様子は無い。
「あ……失礼しました。ロシア語の方が?」
「七歳までしか日本にいなかったんです。ものすごく久しぶりに日本語を聞いたから驚いてしまって。出身を聞かれたのよね?」
「はい。お名前が日本名ですので」
「そう。ロシア人との混血だけれど、生まれたのは日本よ。父が母の姓に入ったから……それで、この名前なの」
もしかして?と返される。
「はい。自分は純日本人です。十年程前に、この国に」
「そうなのね。アジア圏の方なのかなとは思ってたの。同じ黒髪だし。お名前は?」
「マナトです。アサカ・マナト」
彼女はふんわり微笑んだ。
「じゃあ……あなただけでも普通に話してくれると嬉しいです。歳も同じくらいな気がするし」
「え」
とんでもない提案に当惑してしまう。
「そ、そういう訳には。立場もありますので」
「そうなの?何だか皆に敬語を使われるのが落ち着かなくて。」
急に慣れない環境に身を置かれ、心細い気持ちはよくわかる。伏し目がちに話す彼女と十年前の自分が重なる。
「わかった。じゃあ……二人の時だけ」
躊躇いつつも受け入れた。
うん、と彼女が頷くと首もとでネックレスが揺れた。
