きみが春なら

── ぱぁん、と。突然すごい音がした。

驚いて目を覚ますと、すぐにまた連続で同じ音がする。長く眠ってしまったのか、すっかり明るくなっていた。
木々の隙間から見えたのは、城の正門を囲む大勢の人々。先程から鳴り響いているのは花火の音だった。

何だ、と思ったところで門が開いた。大歓声と拍手が沸き起こる。
腕を組み中から現れたのは、白いタキシードに身を包んだ王子と
── ウエディングドレス姿のハルだった。

「っ、いっ……!」

立ち上がりかけたところであばらがごりっ、と鳴った。
痛みでしゃがみ込みながら。それでも目の前の光景から目が離せない。

そうだ。結婚式の準備で忙しい、と。
もう当日だと、さっきの男が言っていた。

「ハル、」

白いベールで顔が隠れているが、見紛うはずもない。
長く敷かれた赤絨毯の上を進み、馬車の前で立ち止まった二人は向かい合う。
王子がゆっくりとベールを上げる。

「……や、」

やめろ。やめろ。
やめてくれ!

黒髪を後ろで編んだ君がベールの中から顔を出す。王子が何か耳打ちし、静かに微笑んでいる。

祝福の鐘が鳴り響く中。
二人はゆっくりと唇を重ねた。