きみが春なら

瞼を持ち上げると、鉄格子に掴まり俺を呼ぶ君の姿が霞んで見えた。

「……ハル!どうやって、」

ゆっくり焦点が合っていく。夢かと思ったが現実らしい。
久しぶりに体を起こした瞬間、刺すようにあばらが痛み顔が歪む。

「怪我をしているの?」
「……いや?何とも」

立ち上がったものの、足がふらつき壁にぶちあたった。君が小さく悲鳴をあげる。
「痩せたわ……」
「そうか?割に元気だよ」
笑って見せたつもりだが、上手く出来たかわからなかった。

「イーヴァン、」

二重の鉄格子の向こうにいる君に。
手を伸ばすも、届かない。

「時間が無いの。よく聞いて」
切羽詰まった声に目を上げた。

「ここを出たら……すぐにこの国を離れて」
「── え?」
「ちゃんと毎日、ご飯を食べて。あたたかいベッドで眠って?あなたは、疲れるとすぐにソファで眠ってしまうから」
眉を寄せる俺に。

「どこか遠いところで、幸せに暮らすって。私と約束して?」

お願い、と。ボロボロ泣きながら君は言う。