きみが春なら

あなたのいない、この部屋で。
いつまでもいつまでも声をあげて泣いた。

泣きすぎて頭が痛い。それでも際限なく涙が溢れた。

枕が二つ並ぶベッドに。
一緒にご飯を食べたテーブルに。
仕事終わりの彼がいつも寝落ちてしまうソファ。

部屋中に、幸せが詰まってる。

さよなら、なんて
言える訳ない。
別れる為にこの国に来たんじゃない。

『こうしている間にも、奴はどんどん弱っていく』。

王子様の言葉が、私を追い詰める。
迷っている時間は無い。他に何にも考えられない。

「イーヴァン……」

選択肢は一つだった。
彼を守りたかった。
この先、隣にいられなくても。


顔を拭き、ボストンバッグをひとつ抱える。
扉を閉めたら絶対に振り返らずに歩くと決めた。


最愛の人と、
永遠に別れる為に。