きみが春なら

ここに連れてこられて
いったい何日経ったんだろう。
ろくに寝かせてもらえず、時間の感覚が麻痺していた。

理由もわからないまま暴行を受け続け、体のあちこちが痛む。頭も全く働かない。
薄暗い牢の壁にもたれていると。

「酷い姿だな?」

うっすら目を開き顔を上げる。二重になった鉄格子の向こうから、煌びやかな服に身を包んだ誰かが俺を見ていた。
少し口を動かしただけで血の味がする。

「……誰だ」
「貴様も俺を知らないか。揃いも揃って世間知らずだな。それとも暴行で目が霞むのか?」
ふ、と笑い声を漏らし。しばしの沈黙の後、その男は言った。

「ハルは。実に愛らしい女だな?」

唐突に出た彼女の名前に、はっとする。

「少々幼顔だが、そこも好みだ。ま、体にはもう少しメリハリが欲しいところではあるが」
「な……!」
沸き上がる怒りのままに立ち上がる。

「お前が……ロレンツォか」
「口の利き方に気をつけろ。」

鉄格子の隙間から、思い切り腹を蹴り飛ばされた。一瞬の出来事で、弱り切った体では受け身もとれず無様に床に転がった。

「お前は近々ロシア警察に引き渡す。」
「ロシア……警察?」

そう発しただけで、うめき声が出るほど腹に激痛が走る。
「折れたな。」蹲る俺を見てロレンツォは愉快そうに言った。