「恋人が……プリンセスに選ばれたって?」
先程までの穏やかな笑みは一瞬にして消え去り、ケビーは絶句している。
「ペテルブルクから俺が連れてきた。一緒に住んでる」
「まさか……確かなのか?」
「絶対に彼女なんだ。ハル・ユミキ。さっきの客も話してただろ?黒髪で混血で教会育ち。今ちょっと家に戻ったら、昼間王子が迎えにきたって言ってたよ」
頭をぐしゃぐしゃ掻きながら言った。
「信じられない。王室に勤めてたとか?」
「違う。どこで見初められたのか全くわからない」
ケビーはパクパク口を動かしている。こんなに取り乱している姿は珍しい。
「式までに彼女を連れて国を出たい。でも、方法が見つからないんだ。許可証が無きゃ汽車も船も使えない。偽造しようにも今からじゃ間に合わない。何か抜け道を知らないか」
口にすればするほど絶望的な状況だった。
『一国の王子に太刀打ちできる男なんかいない』。ハルに言ったのは、他ならぬ俺自身だ。
手を繋いでそんな話をしたあの日が、何だか遠い昔のように感じた。
「抜け道は── たぶん、無い。可哀想だけど」
ケビーが沈痛な面持ちで俺を見ている。
先程までの穏やかな笑みは一瞬にして消え去り、ケビーは絶句している。
「ペテルブルクから俺が連れてきた。一緒に住んでる」
「まさか……確かなのか?」
「絶対に彼女なんだ。ハル・ユミキ。さっきの客も話してただろ?黒髪で混血で教会育ち。今ちょっと家に戻ったら、昼間王子が迎えにきたって言ってたよ」
頭をぐしゃぐしゃ掻きながら言った。
「信じられない。王室に勤めてたとか?」
「違う。どこで見初められたのか全くわからない」
ケビーはパクパク口を動かしている。こんなに取り乱している姿は珍しい。
「式までに彼女を連れて国を出たい。でも、方法が見つからないんだ。許可証が無きゃ汽車も船も使えない。偽造しようにも今からじゃ間に合わない。何か抜け道を知らないか」
口にすればするほど絶望的な状況だった。
『一国の王子に太刀打ちできる男なんかいない』。ハルに言ったのは、他ならぬ俺自身だ。
手を繋いでそんな話をしたあの日が、何だか遠い昔のように感じた。
「抜け道は── たぶん、無い。可哀想だけど」
ケビーが沈痛な面持ちで俺を見ている。
