きみが春なら

◇ ◇ ◇ ◇

泣き疲れた君が眠った後。
真夜中の街を一人で歩きながら
どうする、と考える。

実際問題、今ハルに出国の許可が下りる訳がない。
偽名を使うか?変装させてこっそり連れ出せばいいのか?それより許可証を偽造した方が確実か。
── 出来るか?一週間以内に。

「……」

口ではああ言ったが、可能な策が何ひとつ浮かばない。
でも、逃げなきゃ奪われる。
思考はいつまでも堂々巡りだった。


「どうだ?気分は」
店に戻るとケビーがそう声をかけてくれた。

「平気だ。悪かった」
「イーヴァン」
大量の洗い物に手をつけようとすると、肩を叩かれた。
「何かあったなら相談にのるぞ」
「……」
「力になれるかはわからないけど。今なら客もいないし」

ピークに忙しい時間帯を過ぎ、店内はがらんとしている。
さっきの俺の様子からただ事じゃないと感じ取ったのだろう。その優しさが胸に染みる。

「世間話だと思って聞いてくれるか?」

自分だけでは抱えきれず、とうとう切り出す事にした。
俺たちの間には、もうそれだけ信頼関係が築かれていた。

「良い方法があったら教えて欲しい」
「ああ。もちろん」

頷いたケビーは、カウンターの椅子を引いてくれた。