きみが春なら

「ねぇ」「手を握って?」
二人でベッドに横になり言われた通り指を絡めると、君はゆっくり目を閉じた。
額に、鼻に、瞼に。そして唇に。触れるだけのキスをする。
いつも眠る前にそうしているように。

「ぜ……んぜん違うわ」
「、え?」
突然彼女が言った。

「全然違うの」
ギリギリ堪えていたものが一気に溢れ出したように、
「あなたにされるのは……こんなに幸せなのに」
俺の胸に顔を押し当て、君は泣き出した。

「された、のか?王子にも」
彼女が小さく頷いた。

もう。
何だか、もう。
頭がおかしくなりそうだ。

「好きなの。他の人じゃ駄目なの」
「……ハル」
「会えなくなったらどうしよう。どうしたらいいの?」

悲痛な声に、俺の目にまで涙が浮かびそうになる。慌てて唇を噛みしめ押し込めた。

── 引き離されそうな予感。
抗えないかもしれない現実。
波のように押し寄せる不安に、身を寄せ合って耐えている。

「……大丈夫だよ。ハル」

何とかするよ。
大丈夫だよ。

海に浮かぶ木の葉みたいに、無力でちっぽけな言葉でも。
今はただ、繰り返すしかなかった。