きみが春なら


── パァン、と。突然、東の方向で銃声がした。

「きゃあっ」
「なんだ!?」

一瞬の静寂の後、ぐわっと人波が押し寄せる。

「暴動だ!」

街中は大混乱になった。人々は悲鳴を上げ、押し合いながら一斉に反対方向へ走り出す。
手が離れている事に気付き視線を前に戻すと、ハルがその場に蹲って震えていた。

「おい、どうした?」

慌てて肩を抱く。彼女の顔は青白かった。

「ごめ、なさ……わたし……」

消え入りそうな声に紛れ、もう一発銃声が轟く。さっきよりも近い距離だ。

「とにかく逃げよう。立てるか?」

ほとんど抱えるようにして彼女をその場から連れ出した。