きみが春なら

「ようやく気付いたか。俺の正体に」
馬から飛び降り、私の目の前に着地する。

ほんのりグレーがかったアッシュの髪に、切れ長の瞳。すっと通った鼻筋。
……そうだ。出会った時も、この人は上から降ってきて。

── 『俺が誰かわからんのか?』

卒倒しそうだった。
まさか、
この人がロレンツォ王子様だったなんて。

「結婚式は6日後だ。衣装合わせを急がねばならん」
「ま、まだ仕事中で」
「俺が店主に話を付けてやる。今日限りで辞めさせてもらうとな」

王子様は私の横をすり抜け、お店へ入ろうとする。

「な、」

待って、待って。


「……っ」


右手をぎゅうっと握り込む。
勇気を出して振り返った。