きみが春なら

「ハル」
足を止め、向かい合う。


「結婚しようか。」


君の背後で、桜の葉が風に揺れていた。

店が通常営業に戻れば、またすれ違いの生活に戻る事になる。
寝顔しか見られない毎日の中に、確かなものが欲しかった。
自惚れなんかじゃなく
彼女もきっと同じ気持ちだと思った。

「家族になってくれないか。俺と」

君は、ただじっと俺を見つめている。


「……いつか、あなたとそうなれたらいいなって。思ってた」


照れた時に前髪をいじる。
いつもの癖ごと抱き寄せた。


── さっき、自然と『来年』の約束が出たように
彼女との未来は、もう自分にとって当たり前のもので。

まさか
隣にいられなくなる日がくるなんて
思いも、しなくて。