「今から何にも予定ないだろ?」
「え、わ、私?」
「おまえの目を見て聞いてんのに、他に誰の予定を聞くんだよ」
ごもっとも。
じゃなくて!
私は恐ろしい空気を醸し出している彼女をチラリと見る。
向けられた黒い影が、私にだけ延びてきている。
ここは、断るしかない。
「わ、私、今日は……」
「一緒に帰ろう」
この人は、いつも突拍子もなく物を言ってくる。
今この状況をわかって言ってるの?
あなたには、私に伸びているこの黒い影が見えないの?
実際にはないものだから見えなくて当たり前だけれど、それでも彼女の鋭い目付きには気づくでしょ?
とにかく早く断らなきゃ。
私が黙っていてはらちがあかない。
「悪いけど、一緒には帰れな……」
「はい!決まり!途中までは一緒には帰れるもんな」



