蛍の季節に、キミはまた会いに来る


「はいはい、ストップスットプ」

今度は右腕ではなく、後ろから両肩を掴まれて立ち止まった。

「何?離してよ! 私といるとイライラするんでしょ? だったら私と関わらない……」

「だーかーら、理由がわかればイライラしないの」

彼が私の前に回ってくる。

「何が不満なわけ? 転校? 友達と離れたから?」

“友達”。その言葉に、吐き気がした。

『私、聖菜と友達なんかじゃないよ』

嫌なことを思い出した。

親友だと思っていた相手に裏切られた、あまりにも辛すぎる記憶。

消せることなら、消去したいデータ。

結局、協調性のないヤツははずされる。

「どうした? 突然」

甦った吐き気のする記憶に溺れそうなところを、彼の声で現実に戻ってきた。

ハッとして彼を見る。

その表情には、先程の苛立ちは感じられない。

私を心配そうに眺めている。

「気分でも悪いのか? 急に苦しそうな顔してたけど」

私は彼を無視して再び歩みを進める。

だけど行く手を阻まれた。

「窮屈な考え方はやめてさ、まぁ、空を見てみろって」

彼の人差し指が夜空に向く。

ゆっくり見上げると、瞳全体に輝きを放つ無数の星がうつった。

......キレイ。

美しいものを見て、キレイと思ってしまったことにも、焦りを感じた。