「ああそうですかわかりましたって引き返せないだろ?じいちゃんから頼まれたのに。母さんからだって言われてんだ」
「だったら明日でも私からきちんと話しておきます。今後、送りは必要ありませんって」
私は言いながら歩く速度を上げる。
少しでも彼と距離を取れば、もし目撃されたとしても、一緒にいるとは誰も思わないだろうから。
「ちょっと待てって!」
右手にグイッと引っ張られる力を感じて、私は歩みを止めた。
数メートル先には淡く光る街灯。
その灯りには力がなくいつ消えてしまうかわからない。
「何でそんなに俺を避けるんだよ。俺、何もしてねぇじゃん」
私は目を閉じて面倒臭い空気を思い切り表に出しながら、深く息を吐く。
「そう。あなたは何もしてないよ。何もしなくていいの。今も、これからもずっと」
「は?」
「私に関わらないで。私たちは確かに豊田さん、あ〜、あなたのお母さんとかにお世話になってるけど、あなたには関係のないことだから、私がこれから先も豊田さんの家に行ったとしても、あなたは私を無視してていいの」
田舎って本当に静かだ。
私の声が夜道に響いてる。
きっと、この街灯の灯りよりも私の声の方が力が強い。
私の大声のせいで灯りが消えてしまいそうだ。



