「い、いえ!いいんです!私は大丈夫です!ひとりで全然平気ですから!」
私はそれだけ言うと、ふたりの顔を見ずに黒崎くんの横をすり抜けた。
だけど、左腕を強く掴まれ意思とは関係なく体が停止する。
驚いて左腕を見ると、黒崎くんの手が私の腕を掴んでいた。
「送ってってやるからちょっと待ってろ」
「え、いや、あの」
「じいちゃん、こいつ見張ってて。スマホとってくるから」
そう言って、少しだけ新しい方の平屋の中に小走りで消えていき、1分もしないうちにまた出てきた。
「お、逃げずにちゃんと待ってたな」
逃げるもなにも、豊田さんに腕を掴まれているのに逃げられるわけがない。
どうしてこんなことになっているのだろう。
関わりたくたかった相手と、二人夜道を歩いているなんて。
本当にひとりで帰れた。
……口ごもって断れなかった私が悪いのだけど。
「ねぇ、そんなに離れて歩かなくてもよくない?」
車一台がやっと通れるほどの道の、端と端を歩き続けると、彼が深く息を吐きながら言った。
「私は一人で大丈夫なので、どうぞ帰ってください」
私は反対側にいる彼を見ずに声だけを発す。



