「お~、聖菜ちゃん。こんばんは」
また後ろから声をかけられた。
ショート寸前の頭からはきっと白い煙が出ていると思う。
「こんな夜にひとりでまた、どうかしたのかい?」
心配そうな表情の豊田さんの隣には、黒崎くん。
私は豊田さんの質問に答えることなく、豊田さんと黒崎くんを交互に見比べた。
あまり似ていない。
本当に、孫とおじいちゃんなのだろうか。
私が答えずにいると、豊田さんが首を傾げた。
私は慌てて豊田さんにビニール袋を差し出す。
「あ、あの、これ、父が作ったんです。よかったら、どうぞ」
両手で手渡すと豊田さんは嬉しそうに表情を明るめた。
「うわぁ、嬉しいなぁ。女房に先立たれてひとりだからこういうのは心があたたまる」
ありがとう。豊田さんのゆっくりとした口調に私は少しだけ口角をあげた。
「せっかく来てくれたんだ。ちょっと上がっていきなさい」
「あ、いえ。私はこれで。父と残りの家事をしなければならないので」
嘘をついた。
家事はお父さんがやってくれる。
もちろん手伝う時もあるけれど、お父さんは出来るだけひとりでやるからと、私の手を借りようとしないんだ。
だけど今は嘘をついてでもこの場から去りたかった。
クラスメイトと会うのは、学校でだけで十分だ。
「それじゃあ達也。聖菜ちゃんを送ってってやりなさい。夜は物騒だから」
豊田さんの言葉に、私は両手を大きく振って拒否した。



