蛍の季節に、キミはまた会いに来る


「今日、聖菜のことを気にかけてたんだ。ほら、登校初日だっただろう? だから、お前が行って話をしたら安心するんじゃないかな?」

「あ〜……うん」

何だか気が乗らなかったけど、お父さんがお世話になっている人だ。

もし私たち親子が嫌われて仕事をやめろと言われたら、私たちは路頭に迷うことになる。

それだけは避けたい。

「お父さん、その間に洗濯とか済ませとくから。よろしくな」

「う、うん」

ガサリと手に持たされたビニール袋には、筑前煮の入ったタッパー。

いい匂いはする。

おすそ分けするということは、納得の味になったのだろう。

私は、筑前煮とスマホだけを持って家を出た。

薄暗い夜道で誰にも会うことはないと思ったので、スウェットのまま。

夜だし、スウェットで訪ねても失礼ではないよね?

豊田さんの家の周りには畑しかない。

引っ越し当日に挨拶に行ったときには昼間だったので田舎だなぁくらいしか思わなかったけれど、夜の真っ暗闇の中訪れると不気味な感じだ。

それに、家一件一件が遠いため、人の気配も感じられない。