蛍の季節に、キミはまた会いに来る

最終日。

私は、真衣と瀬戸くんに「今日が最後だから、みんなで過ごそう」と言った。

けれど、ふたりは首を横に振った。

『最後だから、ふたりで過ごしなさい』

そう言って、笑ってくれた。

——きっと、本当は。

ふたりだって、黒崎くんと一緒にいたかったはずなのに。

今日が、本当に最後の夜。

川辺に舞う蛍が、空の星みたいに瞬いている。

水に落ちて、ようやく乾いたノートの最後のページ。

しわだらけで、文字は少し歪んでしまいそうだった。

「古川が、俺のいない世界でも笑って過ごせますように」

黒崎くんが、書いた文字を静かに読み上げる。

その言葉だけで、涙が溢れた。

「俺が残した未練は……最後に、古川に笑って生きろって言えなかったことだ」

「……っ」

声にならない。

ただ、息が震える。

繋いだ手に、黒崎くんが力を込める。

離したくない。

確かに、ここにいるのに。

触れているのに。

こうして、隣で笑ってくれているのに。

——今日で、終わる。

「古川に出会えて、俺……幸せだった」

黒崎くんが、言葉のあとで小さく息を飲み込む。

「……私も」

それだけ、やっと言えた。

泣いたら——

きっと、止まらなくなるから。