蛍の季節に、キミはまた会いに来る

こんなことで、黒崎くんと過ごせる時間が減るなんて——

『もう、いいよ』

静かな声だった。

「……もういいって、なに?」

取り乱しているのは、私だけだった。

滲む涙で、目の前の黒崎くんの姿がぼやける。

「ただでさえ、明日までしかないのに……これ以上、短くなったらどうするの……?」

言いながら、体が震えた。

分かってる。

時間は、明日まで。

それでも、受け入れられない。

『紙は破けてない』

黒崎くんは、泣きじゃくる私の手からそっとノートを取る。

『少し乾けば、また書ける』

「……っ」

『古川のおかげだよ』

その一言で、また涙が溢れる。

『あーあ……こんなにびしょ濡れになって』

困ったように笑いながら、黒崎くんは私の濡れた髪に触れた。

透き通る手。

それでも、確かにそこにある。

その温もりを確かめるように、私は彼の手を握る。

触れられる。

まだ、ここにいる。

「ほんと、古川は無茶するな」

「だって……」

声が震える。

「もっと、一緒にいたいんだもん」

「古川……」

「もっと一緒にいて、もっといろんなことして……もっと——」

言葉が続かない。

その瞬間。

強く、抱き締められた。

手から離れたノートが、地面に落ちる音がする。

耳元で、黒崎くんの息が震えた。

「……消えたくない」