蛍の季節に、キミはまた会いに来る

6日目。

蛍の光が、いちばん強く輝く夜だった。

“古川と、最後まで穏やかに過ごせますように”

ノートに願いを書き込む黒崎くんの手は、わずかに震えていた。

この一週間。

ノートは、毎日願いを叶えてくれた。

——私たちに、優しい時間をくれた。

「来年も……ここに、一緒に来たい」

言ってはいけないことだと、分かっている。

これは、叶わない願いだってことも。

『来年は、いないよ』

静かな声だった。

『明日で……終わりなんだから』

分かってる。

そんなこと、最初から分かってる。

それでも——聞きたくない。

「ねぇ、そのノートって、生き返る願いはダメなんでしょ?」

『……うん』

「だったらさ……」

言葉が、うまくまとまらない。

それでも、止まれなかった。

「他の願いならいいじゃん! 生き返るのがダメなら……この一週間を一年にするとか、いくらでも方法あるでしょ!」

『……』

「それなら、ルール違反じゃないよね?」

返事はない。

ただ、唇を強く噛みしめているだけ。

それが余計に、焦りを煽る。

「なんで何も言わないの? ちゃんと答えてよ!」

『……古川の未来を削ってまで、残りたくないんだよ!』

「……え?」

思考が、一瞬止まる。

『ここに残るってことは……古川の運命を狂わせるってことなんだよ!』

荒くなる呼吸。

震える肩。

『分かるだろ?』

——分からない。

そんなの、分かるわけない。

『……分かってよ』

「分かるわけないじゃん!!」

叫んだ、その瞬間——

伸ばされた黒崎くんの手に、私の手が触れた。

その拍子に、彼の手からノートが滑り落ちる。

「あっ——」