「はぁい、じゃあ、みんな写真撮るよ〜」
クラスメイトのテンション高い声。
「みんな黒板の前に集まって〜」
後ろのロッカーの前で、三脚に固定にしたデジカメを覗き込み、位置を調節している。
「みんな結構真ん中寄らないとうつらないよ」
撮影担当の男子が、デジカメを見ながら、片手でみんなに中央に寄るように指示している。
「黒崎くん、こっち」
私は、黒崎くんに手招きして、みんなの一番後ろの端っこに立った。
真衣と瀬戸くんは一番前に座ってもうポーズをとっている。
「一緒に写ろう」
前を見ながら言う私に、『え?』と黒崎くんの小さな声が聞こえた。
『いいのか?』
「うん」
カメラを見たまま答える。
「ほら、もっと、こっち来て」
私が黒崎くんの手を握った時、カメラの位置調整を終えた男子が輪の中心に向かって走ってきた。
徐々に姿を現す黒崎くん。
一番後ろの端を選んだのは、黒崎くんの姿が現れても、誰にも気づかれないから。
私は黒崎くんの手を力強く握り、体を彼に寄せてピースをした。
その瞬間焚かれたフラッシュ。
一瞬だけ感じた、黒崎くんの温もり。
手を離した後も、彼の温もりは消えなかった。
後日、みんなに配られた写真を見ると、そこにはやっぱり黒崎くんは写ってはいなかった。
クラスメイトの後ろの端で、不自然に体を傾けピースをして笑っている私。
それを見て涙を流したのは、真衣と、瀬戸くんだった。
この写真の意味を、ふたりは知っているから。
私たちにだけ見える、ぎこちなく笑う黒崎くん。
黒崎くんの願いの通り文化祭は成功に終わったし、最高の思い出になったよ。
ありがとう。



