その時だった。
「要様?」
高野の声でハッとする。
控え室の前。
俺は体調が悪そうな花音の側にいてもらおうと、使用人の高野を連れてきた。
そして――
扉を開けた瞬間、視界に入った光景に足が止まった。
ソファに迅が座り、眠っている花音を抱きかかえていた。
それも、とても大切そうに。
迅の腕の中で、花音は安心したように眠っている。
「……」
胸の奥がわずかに曇った。
理由は分からない。
だが、面白くはない光景だった。
迅がこちらに気づいたが、花音を抱いているため座ったまま頭を下げた。
「要様、この体勢で失礼いたします」
花音の体が揺れる。
俺は無言で近づいた。
「どういう状況だ」
迅は短く説明した。
「花音様が泣いておられて……そのまま眠られました」
高野が心配そうに覗き込む。
「花音様……大丈夫なのでしょうか……」
俺は軽く手を上げた。
「高野」
「はい」
「やはり下がっていい。悪いな」
「しかし……」
「大丈夫だ。お前の主人は俺がちゃんと見る」
高野は少し驚いた顔をしたが、すぐに頭を下げた。
「承知いたしました」
高野が部屋を出ていく。



