――SIDE Kaname
九条家との婚約の話を聞いた時、正直どうでもよかった。
いや、違う。
興味がなかったわけじゃない。
むしろ――面倒だと思った。
没落しかけた九条家。
どう考えても、この婚約は金目当て。
相手の娘がどんな人間かなど、考える必要もない。
金に目がくらんでいる奴ら……そう思っていた。
……そして母が亡くなってから、悪いイメージもつくようになった獅堂家。
この結婚によって、イメージダウンを払拭させようとしていたに違いない。
だから初めて九条花音を見た時も、特別な感情はなかった。
世間知らずそうな、ただの令嬢。
ただ厄介なのはそいつに俺たちの裏の動きを知られたこと。
まぁ、天然ぽいから脅せばうまく使えるとも思った……が。
あの目……
まっすぐ人を見るあの瞳。
どこかで見たことがあると思った。
そして花音が持っていた指輪で確信した。
二年前の夏祭り。
迷子になっていた少女。
花火の光の中で、俺の傷を手当てしてきた子。
――あれは花音だった。
俺が落とした母の形見を持っていたらしい。
世の中、こんな偶然もあるんだな。
思わず小さく笑う。



