完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~


その時、扉が開く音がした。

「花音様」

「迅さんっ……」

顔を見た瞬間、我慢していたものが一気に溢れる。

「私……ダメでしたぁ……」

涙がぽろぽろ落ちる。

迅さんは少し困ったような顔をした。

それでも静かに近づいてくる。

「そんなことはありません」

そう言いながら、隣に座った。

私はうつむいたまま首を振る。

「要さんの隣に立つのに……」

声が震える。

迅さんは少しだけ迷うように手を止めた。

けれど次の瞬間。

そっと私の背中に手を置き、優しくゆっくり撫でる。

「花音様は、十分頑張っておられます」

その声は、とても静かだった。

「……でも、こんなんじゃ志乃さんに勝てるわけない……」

絶対言葉にしないと決めていたのに……

「志乃様と比べる必要はございません……花音様は花音様にしかない良いところが沢山ありますから」

「ふっ……うぅ……」

涙が止まらない。

気づいたら、私は迅さんの胸に顔を埋めていた。

迅さんの体が一瞬だけ固まる。

でも、すぐにまた背中を優しく撫でてくれた。

「大丈夫です」

低い声が、すぐ近くで聞こえる。

「私がお守りします……」


迅さん……?

その安心する声を聞いているうちに――

ふっと、意識が遠くなった。

涙の跡のまま、私はそのまま眠ってしまった。