要さんの腕が、私の体をしっかり支えていた。
そして顔を上げ、落ち着いた声で言った。
「申し訳ありません。花音さんが少し足をくじいたようです」
ざわめきが広がる。
でも要さんは気にする様子もなく、私の方を見た。
「歩けるか?」
「……む、無理かもです」
情けない声になってしまう。
要さんは小さく息をついた。
そして次の瞬間――
ふわっと体が浮いた。
「えっ……!」
気づいた時には、私は要さんに抱き上げられていた。
周囲から小さなどよめきが起きる。
恥ずかしくて顔が熱くなる。
「要さん!?重いので降りますっ」
「黙ってろ」
短く言われて、言葉が止まる。
……怒ってる、よね……
要さんはそのままフロアの端へ向かった。
すぐ隣にある控え室の扉を開け、中へ入る。
静かな部屋だった。
私をソファへそっと下ろす。
「ここで休んでろ」
「……すみません」
さっきからそれしか言えない。
胸の奥が苦しくなる。
今日のために、あんなに練習したのに。
要さんの隣に立てるように、必死だったのに。
「……失敗、しちゃいました」
声が震える。
要さんは少しだけ私を見てから、視線を外した。
「高野を呼んでくる」
短くそれだけ言うと、部屋を出ていった。
静かになると、急に涙が込み上げてきた。
ダメだ……泣いちゃダメ。
そう思うのに、目の奥が熱い。



