会場へ戻ると、ちょうど音楽が流れ始めたところだった。
フロアの中央へ人々の視線が集まる。
その中で、すぐに要さんの姿が目に入った。
私に気づくと、少し眉を上げる。
「花音さん、どこに行ってたんですか!?」
「す、すみません……」
自分でもわかる。
少しだけ言葉がもつれた。
要さんはじっと私の顔を見る。
「……顔が赤いですね」
「えっ」
慌てて頬に触れる。
その時だった。
「それでは、ダンスのお時間です」
司会の声がホールに響いた。
周囲がゆっくりとフロアを空けていく。
「まず始めに、本日の主役である、要様と花音様にウィンナーワルツを踊っていただきましょう!」
要さんが小さく息をついた。
そして、私の手を取る。
「行きましょう」
そのままフロアの中央へと導かれた。
音楽が静かに流れ始める。
要さんの手が、私の背に触れた。
そして私の耳元に顔を近づける。
「……大丈夫か」
「はい」
そう答えたけれど――
体が、少しふわふわする。
ダンスが始まった。
一歩、二歩。
最初はなんとかついていけていた。
でも……
くるりと体を回された瞬間。
視界がぐるりと揺れた。
……あれ?
床が、少し遠い。
もう一度回る。
シャンデリアの光がぐるぐると回るみたいだった。
胸がどきどきする。
レッスンの時は何も感じなかったのに……
音楽も、人の声も、全部遠くなる。



