「お一人ですか?」
低い声がすぐ近くで聞こえる。
「あっ、はい!」
咄嗟に立ち上がったせいか、眩暈がした。
あ、やばい……
次の瞬間、迅さんの手が私の腕をそっと支えていた。
「す、すみません……」
「謝る必要はありません」
迅さんは周りをさっと見渡す。
「少しあちらで座りましょう」
会場の端にある小さなソファへ案内される。
私はそこに腰を下ろした。
なんだか、体がふわふわする。
「大丈夫ですか?」
「はい……たぶん……」
でも自分でもわかる。
ちょっと変だ。
「もしかしてお酒飲まれましたか?」
「えっ!?ジュースなら飲みました……」
さっきの美味しかったジュース、もしかして……
「多分……お酒かもしれませんね」
「ええっ!」
怒られるかなと思ったけれど、そんな様子はなかった。
「ただ今お水をお持ちします」
「すみません……あっあの!」
迅さんが振り向く。
「なんでしょう?」
「朝比奈志乃さんって……要さんと仲良いのでしょうか」
一瞬だけ間があり、迅さんは答えた。
「幼なじみですから」
「幼なじみ……」
昔から知ってる仲、ということだよね。
「花音様が心配されるようなことは何もありません」
「あ……はい」
迅さんには私の考えが御見通しの様で。
「では、ここでお待ちください」
そう言って、静かに会場の奥へ歩いていった。



