完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~


しばらくして、私はゆっくりと会場へ戻った。

さっきと同じ豪華なホール。

でも、さっきよりも人の輪が一か所に集まっているのが見えた。

その中心にいたのは……志乃さんだった。

「志乃さん、この前のコンクール拝見しましたよ」

「本当に素晴らしかった」

「海外でも評価されているそうですね」

次々と声を掛けられている。

志乃さんは落ち着いた笑顔で、一人一人に丁寧に答えていた。

その姿はとても自然で、まるでずっとこの世界にいる人みたいだった。

……すごい。

同い年くらいなのに。

私は少しだけ視線を逸らした。

喉が、からからに乾いていることに気づく。

近くのテーブルには、色とりどりのグラスが並んでいた。

その中で、ふと目に留まったのは淡いピンク色のドリンクだった。

ピンクレディ?

可愛い名前……それに美味しそうな色のジュース。

私はそれを手に取り、そっと一口飲む。

甘くて、飲みやすい。

ほっとして、もう一口飲んだ。

小さいグラスに入っているジュースはあっという間になくなり、もう一杯おかわりした。

緊張してたからか、喉がカラカラで全身に染み渡るような……


「花音様」

後ろから声がした。

振り返ると、迅さんだった。