その時、廊下の方から聞き慣れた声がした。
「花音っ!」
振り返ると、ドアの所にお父様とお母様が立っていた。
「お父様、お母様……!」
思わず背筋が伸びる。
お母様は私を見るなり、目を細めて微笑んだ。
「まあ……本当に綺麗よ、花音」
「えっ……」
「立派なお嬢様になったわね」
少し照れてしまう。
そして、お父様も頷いた。
「九条家の娘として、堂々としていればいい」
その言葉に、少しだけ背中を押された気がした。
「はい……!」
その時、要さんが両親の隣にやってきた。
ライトグレーのタキシードがよく似合っていて、眩しい……
前髪も分けられていて、いつもと違う雰囲気に思わずドキッとする。
「準備はできましたか?」
視線が一瞬、私に向く。
すると……ほんの少しだけ、動きが止まった。
……あれ?
でもすぐに、いつもの表情に戻る。
「もうすぐ時間です」
「は、はい」
すると紬ちゃんがくすっと笑った。
「要様、どうですか?」
要さんは少しだけ視線を逸らした。
「とてもよく似合ってますね」
胸が、どくんと鳴る。
社交辞令かもしれないけど……嬉しい。
「ありがとうございます……」
小さく答えると、要さんはもう扉の方へ歩いていた。
「行きましょう」



