要さんの笑顔に、胸がまた少しだけ胸が騒がしい。
でも、どうしてだろう。
さっきまでの冗談っぽい空気とは少し違って見えた。
トントン……
「花音様」
茶室の外から声がし、すっと障子が開く。
「失礼します」
顔を覗かせたのは紬ちゃんだった。
「あ、紬ちゃん」
私は慌てて体を起こす。
紬ちゃんは一度私と要さんを見て驚いたような顔をしたが、すぐにぺこりと頭を下げた。
「語学レッスンのお時間が近づいております」
「えっ」
思わず声が出る。
「もうそんな時間?」
さっきまでの会話に夢中で、すっかり忘れていた。
紬ちゃんは少しだけ困ったように笑う。
「先生がお待ちなので……」
「す、すぐ行きます!」
私は慌てて立ち上がった。
その時、首元のネックレスが小さく揺れる。
要さんの視線が、一瞬だけそこに落ちた。
でも何も言わない。
「行くか」
要さんが先に立ち上がり、茶室を出て行った。
「あ、はいっ」
私は慌てて後を追う。
茶室を出ようとした時、紬ちゃんがくすっと笑った。
「お二人とも、随分くつろいでいらっしゃったんですね」
「え!?あ……これは、その……」
はしたないって思われたよね……
しかし紬ちゃんは、小声で言った。
「誰にも言いませんから、お気になさらずに」
「……ごめんね」
「では、先生がお待ちですので」
そう言って、先に廊下を歩き出す。
私はその後ろを歩きながら、そっとネックレスを握った。
――もし、あの少年にまた会えたら。
本当に返せる日が来るのかな。
そんなことを思いながら、私は茶室を後にした。



