でも、要さんは何も言わず指輪を見つめる。
……どうしたんだろう。
私は続けた。
「その時迷子になってしまって」
「迷子?」
「お付きの人とはぐれちゃって……」
少し恥ずかしくなって笑う。
「その時に、怪我してる男の子と会ったんです」
私は天井を見ながら思い出す。
「どうしてあんなに怪我していたのかわからなかったのですが……優しい人でした」
要さんは何も言わなかった。
私は指輪を指先で揺らした。
「その人が落としたみたいで」
「……」
「大事そうな指輪だったので、いつか返せたらいいなって思って」
茶室に静かな空気が落ちる。
私が要さんの方を見た、その時だった。
要さんが、そっと手を伸ばす。
私のネックレスの指輪を、指先で触れた。
「その男……まだ探してるかもな」
思わずドキっとした。
「そ、そうですよね!大事な物かもしれませんしっ……」
私が慌ててそう言うと、要さんは指輪を見つめたまま小さく息を吐いた。
「……そうだな」
どこか考え込んでいるような声だった。



