完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~


そんな私を見て、要さんは口元を少し上げた。

「隙だらけだな」

「す、隙って……!」

心臓がうるさい。

顔がどんどん近づいてくる。

「こういう時……すぐに悲鳴あげなきゃダメだろ」

「あげました!」

思わず言い返すと、要さんは吹き出した。

「その声じゃ誰にも気づかれねぇって」

それから、ふっと体を離す。

「冗談だよ」

「じょ、冗談……!?」

「そんな本気で驚くなよ」

私は胸を押さえた。

「び、びっくりします!」

「顔真っ赤」

「なってません!」

そう言い返した瞬間だった。

要さんの視線が、ふと私の首元に落ちた。

笑っていた表情が、ぴたりと止まる。

「……それ」

「え?」

要さんの指が、そっとネックレスに触れた。

チェーンの先に通された、小さな指輪。

「その指輪……どこで手に入れた?」

「あ、これですか?」

指輪を指先でつまむ。

「二年前の夏祭りで拾ったんです」

要さんの目が、わずかに揺れた。

「夏祭り?」

「はい……花火大会の日でした」

胸の奥で、何かが強く跳ねる。

花火……というより、あの少年のことを思い出した。

『助かった』

一瞬、記憶がよみがえる。