紬ちゃんはそう言うと、さっさと出て行ってしまった。
出て行く時、私の方を見て微笑んでいたような。
あの紬ちゃんが珍しい……。
……っていうか、二人っきりって!
なんだか変に意識してしまう。
茶室の空気がゆっくり流れる。
私はゆっくりお茶を飲んでいる要さんの顔を見た。
「あの……」
「ん?」
あ、敬語じゃなくなってる……
「来週……婚約のお披露目会ですよね」
「そうだな」
「ダンスもあるって聞いて……」
思わずため息が漏れる。
「失敗したらどうしようって、ちょっと緊張してて」
要さんがこちらを見る。
「逃げ出したくなんない?」
「え?」
「政略結婚だろ」
さらっと言う。
「レッスンとか……嫌じゃねーのかなって」
私は少し考えた。
……正直に言うべきかな。
でも……
「ありません」
要さんの眉が少し動く。
「本当に?」
「はい」
私はまっすぐ要さんを見る。
「最初はびっくりしましたけど……でも、決めたんです」
「決めた?」
「要さんの奥さんとして、ちゃんと頑張ろうって」
茶室の空気が、少しだけ変わる。
「まだ何もできませんけど……」
私は膝の上でぎゅっと手を握った。
「でも、努力はします」
小さく息を吸う。
「要さんの奥様として恥ずかしくないように」



