――数日後の土曜日
相沢さんにあの話を聞いてから、ずっと頭から離れなかった。
要さんのお母様は殺されたとか。
それも要さんのお父様に。
いやいや、そんなはずない。
でも……あの寂しそうな横顔を思い出すと、胸がざわつく。
考え込んだまま廊下を歩いていると、前から要さんが歩いてくるのが見えた。
「あ、要さん!」
思わず声をかけると、要さんが足を止める。
「どうしました?」
あ……表向きの対応だ。
要さんは完全に二人っきりじゃない場合は、敬語を使ってくる。
「今日は部活の練習、お休みですか?」
「いえ、午前だけ練習に行きました」
「そうなんですね……えっと……」
急に緊張してしまう。
「?」
要さんは少し首を傾げた。
でも、せっかく会えたんだ。
私は小さく頭を下げた。
「先日はダンスレッスン、ありがとうございました」
「ああ、気にしないでください」
「いえ、とても助かりました」



