そして小さく言った。
「噂では……旦那様に殺されたとか」
「ええええ!?こ、殺され……!?」
思わず大声を出してしまい、
「馬っ鹿かよ!」
と、相沢さんに口を押さえられる。
「しっ……!声でかい!」
「す、すみません!」
距離がすごく近くて、相沢さんが一瞬固まる。
それから慌てて手を離した。
「……いや、悪い」
そう言って咳払いをする。
私はまだ驚いたままだった。
「でも……そんなこと絶対ありえません!」
「俺もただの噂だと思うけどな。ニュースにもなってねぇし」
相沢さんは肩をすくめた。
「ただ……」
少し真面目な顔になる。
「火のないところに煙は立たねぇって言うだろ?何かありそうだな」
胸がざわっとする。
「……要さんはこの噂知ってるんでしょうか」
相沢さんは少し考えるようにしてから言った。
「多分」
「え……」
「知ってるというか……」
小さく息を吐く。
「疑ってるんじゃねぇかな」
私は言葉を失った。
要さんが……自分のお父様を……?
あの肖像画の前で見せた、少し寂しそうな顔が頭に浮かぶ。
「……そんな」
小さく呟くと、相沢さんが言った。
「まあ……ただの噂じゃねーの!?」
でも……胸の奥が、ざわざわして落ち着かなかった。
まるで、何か大きな秘密に触れてしまったみたいに。



