二人でホールから出た時、ふと視線が壁に向いた。
そこには女性の肖像画が。
昨日は疲れ果てて気付かなかったけど……
すごく綺麗で優しそうな人。
「この方って……」
「母だ」
要さんが静かな声で言った。
「要さんのお母様!?」
確か小さい頃に亡くされたと聞いている。
「似ていらっしゃいますね……」
「そんなこと言われたことない。母は俺と違って優しさの塊のような人だったから」
ほんの一瞬だけ、寂しそうな顔をした。
私は思わず言った。
「いえ、要さんも優しいお方です」
要さんの眉が少し寄る。
「慰めはいらない」
「慰めじゃないです」
私は首を振る。
「昨日だって……助けてくださいました」
一瞬空気が止まり、要さんが少し黙った。
「私、嬉しかったです」
「……何が」
「要さんが助けてくれたこと」
それから小さく言った。
「……変な女」
そう言って背を向ける。
でもその言葉はいつもよりも柔らかく響いた。



