「――花嫁修業、ですか!?」
思わず立ち上がってしまった。
自分でも驚くほど大きな声が出て、応接間に響く。
目の前では、父と母が揃ってこちらを見ていた。
二人とも驚いた様子はなく、むしろ「やっぱり」という顔をしている。
「あの……私まだ高校生ですし……結婚なんて、」
「落ち着きなさい、花音」
母が穏やかに言うけれど、無理なものは無理だ。
花嫁修業って……あの、花嫁修業!?
頭の中で、料理、教養、礼儀作法……
次々と知らない世界が浮かんでは消えていく。
「私、家事なんてほとんどやったことありませんっ……」
そう言うと、父は切ない顔をして呟く。
「花音……どうか力になってほしいんだ」
「……どういうことでしょうか」
母が憂いを帯びた表情で口を開く。
「……あなたも気づいていると思うけれど」
胸が、少しだけざわつく。
「ここ数年、九条家の事業はあまり順調ではないの」
私は小さく頷いた。
薄々、感じてはいた。
父が夜遅くまで書斎にいること。
母が家計の話をすることが増えたこと。



