迅さんは最後に私へ視線を向けた。
「花音様」
「はい」
「これからも、どうか要様をよろしくお願いいたします」
優しく微笑む。
私は、しっかり頷いた。
「はい!」
迅さんも小さく頷き返す。
そして一礼すると、そのまま静かに去っていった。
残されたのは、私と要さんだけ。
しばらく沈黙が落ちる。
すると突然、ぐいっと腕を引かれた。
「きゃっ」
「……来い」
「えっ?」
そのまま要さんに手を引かれ、廊下を歩く。
「要さんっ、どこ行くんですか!?」
「俺の部屋」
「えぇ!?」
勢いよく扉が閉まる。
次の瞬間、背中から抱きしめられた。
「……要さん?」
「ムカつく」
低い声が耳元で落ちる。
「花音が迅のこと庇うから」
「だ、だって殴るんですもん……!」
「そりゃ殴るだろ」
抱きしめる腕に力がこもる。
「おでこでも嫌なんだけど」
「えぇ……」
「俺以外に触られんな」
その声は、子供みたいに不機嫌だった。
でも、どこか甘くて。



